シナリオ008『セックスって何かしら?』

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トリニティムーンフリー脚本008

『セックスって何かしら?』

20160401

高辻カンナ

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お嬢様……ちょっと高飛車。

 

如月……メイド。わりとクール。

 


 

お嬢様「『使用フリー脚本008』」

 

如月「『セックスって何かしら?』」

 

ちょっと間。

 

お嬢様「如月ー。如月はどこかしらー?」

 

如月「はーい。お呼びでしょうか、お嬢様」

 

お嬢様「あなたに尋ねたいことがあるの。正直に答えなさい」

 

如月「はあ。お嬢様の命令なら、そのようにいたしますが。しかしメイドの私には仕事もございます。手短にお願いできますか?」

 

お嬢様「いいのよ、仕事なんてどうでも。こちらの方がよっぽど重要だわ」

 

如月「そうですか。では、その重要なこととは何でしょう?」

 

お嬢様「如月。あなた、ふしだらな女だそうね」

 

如月「……はい?」

 

お嬢様「他のメイドたちが噂しているわよ。あなた、男の人と同棲しているでしょう。そして毎晩毎晩、何回もセックスをしているのだわ」

 

如月「まあ、否定はいたしません。言い返すのも面倒ですし」

 

お嬢様「ごほん。それでなんだけど、如月に教えて欲しいことがあるの」

 

如月「はい、私にわかることであれば」

 

お嬢様「セックスって……何かしら?」

 

如月「……はあっ?」

 

お嬢様「あなた、大好きなのでしょう。そのセックスとやらが。それがどんなことなのか、あたしに教えなさい」

 

如月「お嬢様は……もう立派な大人ですよね?」

 

お嬢様「当たり前じゃないの。お酒だってたしなめる年齢だわ」

 

如月「なのに知らないんですか? したことがない、の間違いではなくて?」

 

お嬢様「如月はバカね。セックスが何かも知らないのに、することなんてできるわけがないでしょう」

 

如月「普通は小学校の、保健の授業で習いませんか?」

 

お嬢様「あたしは幼い頃、病弱だったから、あまり学校には通っていないの」

 

如月「年頃になったら、友達とそんな話をするのが普通でしょう」

 

お嬢様「あたしはとても高貴な生まれなの。下々の者と友達になんてならなかったわ」

 

如月「自分でググったりしたらいいんじゃないですか? それが一番早くて正確だと思いますよ」

 

お嬢様「それは、いやなの! 簡単にパソコンで調べるなんて、あたしのプライドが許さないの! 本当は人に教えを乞うのもいやなのよ? でも如月はただのメイドだし、言うなれば、あたしにとっては人間以下の存在じゃない。だから聞いてあげてやってもいいかしら、と思って」

 

如月「お嬢様……殴りますよ?」

 

お嬢様「あたしが、わざわざ質問してさしあげてるのよ? さあ、早く答えなさい!」

 

如月「わかりました。どこから説明したらいいのでしょう? 生き物には生まれつき、オスとメスの二種類がいますよね?」

 

お嬢様「カタツムリやミミズは雌雄同体と言って、オスでもありメスでもあるのよ。だから二種類ではないわね。如月はそんなことも知らないの? 教養がないのね」

 

如月「お嬢様……本当に殴りますよ?」

 

お嬢様「あなたに知識を分け与えてあげたというのに、どうして殴られなければいけないのかしら。それよりもあたしに、セックスとは何かを教えなさい」

 

如月「まあ、セックスというのは生殖活動ですね」

 

お嬢様「生殖活動?」

 

如月「男と女が、子供を作る行為ですよ」

 

お嬢様「それは結婚でしょう。夫婦になると自然に子供ができるものだと、お母様からも教わったわ」

 

如月「結婚しても、セックスをしないと子供は産まれないのです。子供を作るためにする、神聖な行為がセックスなのです」

 

お嬢様「ふふん。そんなことで、あたしはだまされないわよ」

 

如月「はあ」

 

お嬢様「じゃあ、如月。あなたは、子供を作るためにセックスしているというの?」

 

如月「私は、子供が欲しくて、しているわけではありませんねえ」

 

お嬢様「ほおら、そうでしょう! セックスは生殖活動と関係がないのだわ。第一、セックスが神聖な行為ですって? 如月みたいな汚れた人間が、そんなことをするわけないでしょう!」

 

如月「お嬢様……やっぱり殴りますよ?」

 

お嬢様「汚れた人間だけがする、下品な行為なのかしら。あたしみたいな高貴な生まれの、上品な人間には関係がないとか?」

 

如月「下品な人間だとか、上品な人間だとかは関係ありません。セックスは、みんながすることなのです。……あ。でも上品なセックスと下品なセックスはあるかもしれませんね」

 

お嬢様「なんですって?」

 

如月「ちなみに、私は下品なセックスの方が好きです」

 

お嬢様「ああ! ますます謎が深まるばかりだわ! わからない! あたしには、セックスが何か、まったくわからない! 如月みたいな、間が抜けた人間でさえ知っているというのに!」

 

如月「お嬢様……そろそろ本当に殴りますよ?」

 

お嬢様「でも、生殖活動と関係がないのは確かだわ。男同士や女同士でも、セックスはするのでしょう。男同士や女同士では、結婚しても子供はできないもの」

 

如月「だんだん面倒くさくなってきました。そうですね。では、こうしましょう。それは愛の行為なのです。二人で、愛を確かめ合うのがセックスなのです」

 

お嬢様「それはキスのことだと思うわ」

 

如月「キスよりも激しい行為なのです」

 

お嬢様「激しいキスのことは、フレンチキスと言うのよ。そもそも、愛の行為なんて嘘だわ。だって世の中には、お金のためにセックスする人もいるのでしょう」

 

如月「いますね。そういうお店もありますし」

 

お嬢様「如月だって、お金が欲しくてセックスしてるんでしょう? だって愛の行為なんて崇高なこと、あなたみたいな堕落した人間にできるわけがないもの」

 

如月「お嬢様……今のはさすがに、殴る寸前でしたよ?」

 

お嬢様「セックスするためにお金を払ったり、もらったりもするのね。ますます謎だわ」

 

如月「はいはい。セックスはとても気持ちいいのです。お金を払ってでもしたくなるくらい、それは気持ちいいのです」

 

お嬢様「それも嘘よ。初めてはとても痛いと聞いているわ」

 

如月「お嬢様は、本当に余計な知識だけはもっていますね」

 

お嬢様「もうじれったいわ! 如月、目の前でセックスして見せなさい」

 

如月「他人に見せる行為ではないですよ」

 

お嬢様「嘘よ。世の中には、セックスを撮影したDVDもあるそうじゃないの。他人に見せるためにセックスする人たちもいるのだわ」

 

如月「じゃあ、そういうDVDを借りてくればいいじゃないですか」

 

お嬢様「そんなくだらないことに、お金は使えないわ。もういい! 如月、あなた、あたしとセックスしなさい」

 

如月「はあ?」

 

お嬢様「さあ、早く! これは命令よ! 従わないと、クビにするわ!」

 

如月「仕事を失うのは困りますけどねえ」

 

お嬢様「なぜ躊躇するの? 如月はセックスが好きで好きでたまらないのでしょう。誰とでもする、ふしだらな女のはずだわ」

 

如月「お嬢様……泣いて謝るまで殴りますよ?」

 

お嬢様「さあ、はやく! なんだったら、ボーナスを払ってもいいのよ」

 

如月「……わかりました。お嬢様の寝室に参りましょう。そのかわり、あとから後悔しても知りませんし、文句を言われても困りますからね?」

 

寝室のドアの閉まる音。

ちょっと間。

 

お嬢様「あ、あ、あ。あーっ!」

 

間。

 

如月「どうでしたか? これがセックスです」

 

お嬢様「これがセックス……。生殖活動で、神聖な行為で、上品で、下品で、愛を確かめ合う行為で、キスより激しく、お金を払ったり、お金をもらったり、とても気持ち良くて、最初は痛くて、他人には見せる行為ではなかったり、他人に見せるためにする人がいたりする行為……」

 

如月「もういいですよね? 私、仕事に戻りますよ?」

 

お嬢様「でも、わからない……あたしには、やはりわからない……」

 

如月「まだわからないことがあるんですか?」

 

お嬢様「如月! もう1回、いや2回しましょう。いいえ、それでもきっと足りないわ。きちんとセックスが何かわかるまで、何度だってするわよ! もちろん、あなたもするわよね? だって如月はセックスが大好きで、ふしだらで、淫乱で、ビッチで、性欲の塊で、好き者で、いやらしくて、だらしなくて――」

 

マンガっぽい殴る音。

 

お嬢様「ああーん! 如月が殴ったあ!」

 

おわり

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