シナリオ002『新しいお母さん』

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トリニティムーンフリー脚本002

『新しいお母さん』

20151029

高辻カンナ

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晴美……新しいお母さん

 

まどか……年頃の娘

 


 

晴美「『使用フリー脚本』002」

 

まどか「『新しいお母さん』」

 

ちょっと間。

 

晴美「まどかちゃーん。晩御飯できたわよー。まどかちゃーん。あら?」

 

まどか「か、かってに部屋にはいってくるんじゃねえよ」

 

晴美「だってドアが開いてたんだものー。でも、ごめんね。お母さん、まどかちゃんを怒らせちゃったかしら」

 

まどか「ああ、げきおこだよ。でもその前に、言っておく。お母さんじゃねえよ。あたしはまだ、あんたを新しいお母さんとは認めてないんだからな」

 

晴美「ああん、お母さん、悲しい。でもせめて、『あんた』って呼ぶのはやめて欲しいわあ。だって、もう一緒に暮らしてるんだもの。ね、せめて名前で呼んで。お願い、まどかちゃあん」

 

まどか「ちぇっ、しょうがねえなあ」

 

晴美「じゃあ、呼んでみてえ」

 

まどか「今なのかよ」

 

晴美「うん、い、ま。お願い、はやくう」

 

まどか「は、晴美……さん」

 

晴美「ああん。嬉しいわあ。お母さん、こんな可愛い妹が欲しかったのお。もー、ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ」

 

まどか「抱きつくんじゃねえよ、うっとおしいなあ」

 

晴美「可愛い妹みたいだけど、戸籍上は娘になるのよねえ。でも歳が近いんだから、気持ち的には妹になっちゃっても仕方がないわよね。うーん? まどかちゃんはどういう気持ちかな?」

 

まどか「そういうデリケートなことを直球で聞くなよ。あたしだって、まだ整理がつかなくて悩んでるんだよ。少しは察しろ」

 

晴美「あら、悩み? お母さんに、何でも相談してごらんなさい。お母さん、まどかちゃんの力に、きっとなってみせるわ」

 

まどか「だから、晴美さんのことで悩んでるんだよ。お母さんお母さんって何度も言うな。って言うか、部屋を出てってくれる? この家には、プライバシーもないのかよ」

 

晴美「うーん? あのね、お母さんもね、それはちょっと困ってるのよ?」

 

まどか「……どういうことだよ」

 

晴美「あら、まどかちゃん、聞いてくれるの? 優しいわあ」

 

まどか「単なる興味だよ。優しいからじゃねえよ」

 

晴美「あのね、この家、ちょーっと壁が薄いでしょ? お母さんとお父さんが、夜中にえっちしてる時の声、まどかちゃんに聞こえてないかしら? どう?」

 

まどか「だから直球で聞くんじゃねえよ。答える方が逆に気まずいだろ」

 

晴美「で、どう? やっぱり聞こえてる?」

 

まどか「ああ、ばっちり聞こえてるよ。毎晩、あんあんあんあん、良くも飽きずにやってるな」

 

晴美「あーん。お母さん、やっぱり声が大きく出ちゃうのよねえ。でもね、それはお父さんがテクニシャンだからなのよ? ひとりでする時は、もう少し静かよ?」

 

まどか「そんなこと聞いてねえよ。つーか、お父さんと晴美さんがえっちしてる姿、想像しちゃっただろ。年頃の娘には、もっと気をつかえよ」

 

晴美「まどかちゃんはどう? 声がやっぱり出ちゃうタイプ?」

 

まどか「あたしのことは、どうでもいいだろ。第一、何でそんなことまで、晴美さんに話さなきゃいけないんだよ」

 

晴美「あらあ。家族の間では、隠し事はなしだわ」

 

まどか「それは普通、隠す事だろ。むしろ家族なら、余計に隠したい事だろ」

 

晴美「あたしは声も大きいけど、おつゆも多いタイプなのよねえ。毎晩、シーツがぐっしょりになっちゃうの」

 

まどか「だから聞いてないだろ。お父さんと晴美さんがえっちしてる姿、また想像しちゃっただろ。普通ならとっくに、家出してるレベルのデリカシーの無さだぞ」

 

晴美「ネットでググったら、ペットシーツを下に敷けばいいって書いてたのよ。でも、わんちゃんもいないのに、ペットシーツを買うのもねえ。ご近所の人に見られたら、何てごまかせばいいのかしら。まどかちゃんは、どう思う?」

 

まどか「知らねえよ。つーか、ペットシーツを使うとか、変な知識をあたしに教えるな。年頃だって言ってるだろ」

 

晴美「まどかちゃんには、そういう悩みはないのね。うらやましいわあ。でもたっぷり濡れないと、えっちの時、痛くない?」

 

まどか「知らないよ! あたし処女だから! そんなこと、まだ知らないのっ!」

 

晴美「あらあ。どうして処女なの? まさか、お尻でしてるとか?」

 

まどか「なんでだよ。単純に、彼氏がいないからだよ」

 

晴美「うーん? どうして彼氏がいないの?」

 

まどか「あたしが可愛くないからだよ」

 

晴美「あらあ。そんなことないわ。まどかちゃん、あたしなんかより、とっても可愛いわよ? だって、あのお父さんの娘なんだもの。うん、可愛い、可愛い。モデルにだってスカウトされたこともあるんでしょ?」

 

まどか「でも、いつも言われるんだ……お前、ちっとも可愛くないって……」

 

晴美「あら? それは性格のお話? そんなことないわよ。内面だって、とっても可愛いと思うの」

 

まどか「こうして晴美さんに、冷たくしてても?」

 

晴美「うん。関係ないわ。まどかちゃんは、とっても可愛い」

 

まどか「可愛くないよ! ちっとも可愛くないよ! 晴美さんのこと、祝ってあげようと、お母さんって呼んであげようと思ってたのに! でも、やっぱりできなくてっ! こうやって冷たく当たってるしっ! ああ、もう! あたし、何か変なこと言ってるし!」

 

晴美「もお、まどかちゃんったらあ。ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅーっ」

 

まどか「晴美……さん……」

 

晴美「いいのよ。まどかちゃんが可愛い女の子だってこと、お母さんは、ちゃーんとわかってるの。だから無理しなくていいから、ね?」

 

まどか「う、うん……」

 

晴美「さあ、ご飯が冷めちゃうわよ。はやく台所に行って食べましょ、ね?」

 

まどか「うん……」

 

晴美「あー。お母さん、もう、お腹ぺこぺこだわあ」

 

まどか「あ、あの! お、おか、おかあ……」

 

晴美「なあに?」

 

まどか「お、お母さんとか、これで簡単に呼ぶと思うなよ! あたしはまだ、晴美さんのこと、お母さんとは認めてないんだからな!」

 

晴美「うーん、それは残念。もうひと押しだったかしら?」

 

まどか「で。今日のメニューはなんだよ」

 

晴美「お父さんが大好きな、ハンバーグよぉ」

 

まどか「またハンバーグなのかよ! (小声で)ちぇっ、しょうがないなあ……うちの、新しいお母さんは」

 

おわり

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