シナリオ011『がんばれ、紫苑ちゃん』

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トリニティムーンフリー脚本011

『がんばれ、紫苑ちゃん』

2016/07/19

高辻カンナ

 


紫苑……弱気なヤンキー

 

みちる……のんびりした女の子

 


 

みちる「『使用フリー脚本011』」

 

紫苑「『がんばれ、紫苑ちゃん』」

 

ちょっと間。

 

ドアを優しくノックする音。

 

みちる「はーい」

 

ドアが優しく開く。

 

紫苑「おらあ! みちる! 今晩、出かけるぞ!」

 

みちる「あらあ。紫苑ちゃん、いらっしゃい。出かけるってどこに?」

 

紫苑「集会だ!」

 

みちる「集会ってなあに? あたし政治的な集会と、宗教的な集会は、ちょっとパスしたいわあ」

 

紫苑「そんなんじゃねえよ」

 

みちる「でも、紫苑ちゃんがそういう集会に行きたいなら、あたしに止める権利はないわよねえ。思想も自由だし、宗教も自由なんだもの」

 

紫苑「だから、そんなんじゃねえって言ってるだろ。そもそも俺が今まで、政治とか宗教の話をしたことがあったかよ」

 

みちる「うーん? 他の人に知られたくない政治思想とか、秘密にしてる宗教とかもあるじゃない」

 

紫苑「もういいよ! 俺が言ってるのは、ヤンキーの集会! みんなで工場跡に集まるんだよ」

 

みちる「あらあ。ちょっと興味はあるけど、あたしが行ってもいいのかしら。あたしはヤンキーじゃないわよねえ。あら? でも自覚がないだけで、人にはヤンキーに見えたりするのかしら。紫苑ちゃんには、どう見える?」

 

紫苑「どこから見てもヤンキーじゃねえよ。でもいいんだ、あたしのダチだろ? だから誘ってやってるんだ」

 

みちる「まあ、嬉しいわあ。あたしも紫苑ちゃんのこと、お友達だと思ってる。それも一番のお友達よ。これからもずっと、仲良くしましょうね」

 

紫苑「言われなくてもそのつもりだよ。で、行くのか、行かねえのか」

 

みちる「うーん。もうすぐ期末テストがあるでしょう。あたし、勉強して、もう少し順位を上げたいのよねえ」

 

紫苑「じゃあ、行かねえんだな?」

 

みちる「紫苑ちゃんも、勉強しなくていいの? 前回のテストの順位、トップクラスだったじゃない。あんなに喜んでたのに、順位が落ちたらがっかりしない?」

 

紫苑「(動揺してる)かかか、関係ねえよ。世の中には、勉強より大事なこともあるんだよ」

 

みちる「そうなの。でも、もっと早く誘って欲しかったわあ。あたしも一緒に行きたいけど、やっぱりお勉強も大事だし。今度じゃだめなのかしら? それならあたし、きちんと予定に入れておくから。今日は紫苑ちゃん一人じゃだめ?」

 

紫苑「……だって……怖いだろ」

 

みちる「なあに、紫苑ちゃん? 良く聞こえなかったわ」

 

紫苑「だって怖いだろ! ヤンキーの集会って、男がいっぱい来るんだぞ。俺、ずっと女子校だし、そういう場所に行くのは初めてなんだよ……」

 

みちる「紫苑ちゃん、男性が苦手だものねえ」

 

紫苑「苦手なんじゃねえよ。話とかしたことねえから、どうしたらよいのかわかんねえだけだよ。それも男が一人じゃなくて、いっぱい来るんだぞ。怖く感じちゃってもしょうがねえだろ」

 

みちる「紫苑ちゃんは人一倍、繊細な女の子だものねえ」

 

紫苑「だから、お前が来てくれるなら、安心なんだよ。一緒に来てくれよ」

 

みちる「うーん? あたしは頼りにされてるのね? だったら紫苑ちゃんのためにも集会に行かなきゃだわ。そうよね、世の中には勉強よりも大事なことだってあるのよね」

 

紫苑「……悪いな」

 

みちる「いいのよ。ちょっと楽しそうだし。でも集会って、何をするの?」

 

紫苑「……わかんねえ」

 

みちる「あら、そうなの?」

 

紫苑「たぶん、みんなでお菓子を食べながら、お喋りすると思うんだ。あとトランプとかするかもしれねえな。チェスやリバーシはしねえと思う」

 

みちる「ふーん。お洋服は、何を着て行けばいいのかしら」

 

紫苑「トップクだよ」

 

みちる「あら。聞いたことがないブランドだわ。紫苑ちゃんって、やっぱりお洒落さんよねえ。いつもみたいにフリルがついてるの?」

 

紫苑「ついてねえよ。トップクは特攻服。ヤンキーが気合入れるために着る服だよ」

 

みちる「それってお値段はどれくらい? あたしのお小遣いで買えるのかしら。もっと早く教えてくれれば、あたしだってネットで調べてみたのに」

 

紫苑「俺のトップクを貸してやるから大丈夫だよ」

 

みちる「まあ。それは助かるわ」

 

紫苑「あと、手土産は何がいいんだよ」

 

みちる「紫苑ちゃんは、本当に気が利くわよねえ」

 

紫苑「当たり前だろ。初めて集会に顔を出すんだぞ。手土産ぐらい持って行かないと恥ずかしいじゃねえか」

 

みちる「そうねえ。集会には、何人ぐらいくるのかしら?」

 

紫苑「それがわかんねえんだよ。だからみんなでつまめる、クッキーなんかどうかと思うんだ。でも、甘いのが嫌いな人もいるかもしれねえし。今の季節、イチゴもうめえんだよな。どう思う?」

 

みちる「クッキーでいいんじゃないかしら。お茶にも合うし」

 

紫苑「だよな。誰かアッサムティーを持って来てねえかな。それとクッキーの組み合わせは最高だよな!」

 

みちる「で、その工場跡まで何で行くの? あっ、バイクね。紫苑ちゃん、教習所に通っていたもの。偏見かも知れないけど、ヤンキーってやっぱりバイクのイメージがあるわよね」

 

紫苑「……試験に落ちたんだ」

 

みちる「あら」

 

紫苑「一本橋から落ちて、一発不合格なんだ。でも一本橋って難しいんだぞ。幅が30センチしかなくて、15メートルもあるんだ。普通二輪はこれをゆっくり7秒以上かけて渡らないといけないんだぞ。7秒だぞ! 小型二輪は5秒以上でいいのに」

 

みちる「良くわからないけど、とっても難しいのね。じゃあ、何で行くの?」

 

紫苑「すぐ近くにバス停があるんだ。時刻表は、俺が調べてあるから安心しろ」

 

みちる「紫苑ちゃん、準備がいいわあ。じゃあ帰りもバスね?」

 

紫苑「ああ。最終バスの時間が早いんだよ。あんまり長居はできねえな」

 

みちる「それで……なんだけど。どうしてそこまでして集会に行きたいの? 何か特別な理由があるんでしょう。教えてくれてもいいんじゃない?」

 

紫苑「集会に誘ってくれた先輩が……かっこいいんだ」

 

みちる「まあ。男性に不慣れなのに恋なのね」

 

紫苑「こんな気持ち、初めてなんだよ。先輩のことを思うと、心臓がどきどきするんだよ」

 

みちる「あたし応援するわ。紫苑ちゃんの初恋がかなうよう、協力する」

 

紫苑「すまねえな」

 

みちる「でも、えっちなことは、まだだめよ?」

 

紫苑「そんなこと、するわけないだろ! 俺はまだ未成年なんだぞ! 第一、そういうことは結婚してからだ!」

 

みちる「その先輩が、どうしてもえっちなことしたいって言ったら、断れる?」

 

紫苑「せ、先輩は、そんな不潔な男じゃねえよ! ……たぶん」

 

みちる「キスぐらいは、すぐにしたがるかもしれないわねえ」

 

紫苑「キ、キスう!?」

 

みちる「先輩だって男性だもの。紫苑ちゃんのことが好きなら、そういうこと、求めてくるかもしれないわよ」

 

紫苑「そ……そうかな……。やだな……俺……集会……怖くなってきた」

 

みちる「あら」

 

紫苑「先輩が、俺のことを好きかわからねえけど。そんな心配は、しすぎなのかもしれねえけど。でも……キスとか……求められたら……俺……どうやって断ったらいいか……わかんねえし……先輩に嫌われたくねえけど……でも……怖いし……俺……泣いちゃうかも……」

 

みちる「紫苑ちゃん……」

 

雨の音。

 

みちる「あ、あらあ。雨だわ。集会はどうなるのかしら?」

 

紫苑「雨なら……中止だな」

 

みちる「そうなの。先輩に会えなくて、残念ね」

 

紫苑「……いいんだ。俺、浮かれてたかも。先輩のことが本当に好きなら、もっともっと、男女の正しい付き合い方ってやつを、冷静に考えてみるよ」

 

みちる「うん。あたし、そういう紫苑ちゃんが大好きよ。がんばれ、紫苑ちゃん!」

 

紫苑「じゃあ、せっかく来たんだし、一緒に勉強するかあ」

 

みちる「まあ、嬉しいわ。あたしに、わからないところ教えてくれる?」

 

紫苑「しょうがねえなあ。俺の教え方は、乱暴だぜ? だって俺は、ヤンキーなんだからな!」

おわり

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シナリオ010『コスプレの迷い道』

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トリニティムーンフリー脚本010

『コスプレの迷い道』

2016/09/19

高辻カンナ

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ミイシャ……友達を捜している女の子

 

店員……落ち着いた女性

 

エルザ……はぐれてしまった女の子

 


 

ミイシャ「『使用フリー脚本010』」

 

店員「『コスプレの迷い道』」

 

ちょっと間

 

ミイシャ「あ、あのう……」

 

店員「はい、いかがなさいましたか、お客様」

 

ミイシャ「友達とはぐれてしまって……。このデパート内にいるのは確かだと思うんです。呼び出してもらえませんか」

 

店員「かしこまりました。では、そのお友達のお名前を教えていただけますか?」

 

ミイシャ「やっぱり必要ですよね?」

 

店員「はい? そうですね。お呼び出しいたしますには、やはりお名前をおうかがいしなくては」

 

ミイシャ「それがその……ネットで知り合った友達だから……本名を知らないんです」

 

店員「そうでしたか。最近、そのようなお客様のお呼び出しも、多数うけたまわっておりますよ。ハンドルネームでもかまいません」

 

ミイシャ「ハンドルネーム……というか……コスプレ仲間なので……お互いのキャラ名で……呼び合ってて……」

 

店員「では、そのアニメのキャラ名でお呼びいたしますね」

 

ミイシャ「アニメじゃないです! まだアニメ化はされていないんです!」

 

店員「はあ」

 

ミイシャ「確かに爆発的な人気のソシャゲで、今年のコミケでは大変なことになるとか言われてるけど、公式は頑なにアニメ化を否定してるんです! たぶん作品のクオリティをあげるため、準備に時間をかけてるんだと思うんです。それを心無いファンは、アニメ化を伸ばして伸ばしてお金をたっぷりむしり取るつもりだと言ってるんです。どう思います!? ひどいとは思いませんか!?」

 

店員「はあ。わたくしにはなんとも……」

 

ミイシャ「そ、そうですよね。あたし、このソシャゲのことになると、つい熱くなってしまうんです。ごめんなさい」

 

店員「いいえ、構いませんよ。それで、その、キャラ名でお呼び出しいたしましょうか?」

 

ミイシャ「伝説の女勇者エルザ姫です」

 

店員「ええと。エルザ様、ではいけませんでしょうか?」

 

ミイシャ「だめです」

 

店員「はあ。では、その伝説の女勇者エルザ姫様は、どちらからおいででしょうか?」

 

ミイシャ「サイルリア王国です」

 

店員「え」

 

ミイシャ「だって、彼女が本当はどこに住んでるか知らないんだもの! エルザ姫様の設定ならわかるわ。彼女はサイルリア王国の最後のお姫様なの。王国を滅ぼした紅の魔女を倒すべく、七つの世界を旅しているのよ」

 

店員「はあ。では、これでよろしいのでしょうか? 『サイルリア王国からいらっしゃいました伝説の女勇者エルザ姫様。お友達が一階受付カウンターでお待ちです』、どうでしょう?」

 

ミイシャ「それが、その……じつは友達じゃないんです」

 

店員「え」

 

ミイシャ「あたしは聖なる巫女ミイシャ姫というキャラなんですが、これはエルザ姫の命を奪うためひとりで旅に出た、ファーリューンのお姫様なんです」

 

店員「はあ」

 

ミイシャ「でも、それは誤解で! 本当は、あたしミイシャ姫の許嫁を殺したのは、エルザ姫じゃないんです。それどころか! ふたりは実は聖なる姉妹で、その誤解はやがて解けて、共に紅の魔女に立ち向かうんです!」

 

店員「はあ」

 

ミイシャ「だから今は、友達じゃないんです! 命をつけ狙ってるんです!」

 

店員「では、これでよろしいのでしょうか? 『サイルリア王国からいらっしゃいました伝説の女勇者エルザ姫様。あなたの命をつけ狙っている方が一階受付カウンターでお待ちです』、どうでしょう?」

 

ミイシャ「だいぶ良くなってきたと思います」

 

店員「だいぶ……なんですか」

 

ミイシャ「エルザ姫は、紅の魔女に使える7人の魔界将軍にも、命をつけ狙われているんです。だから、『つけ狙われている』と言っても、それがあたしだとわかるかどうか疑問ですよね?」

 

店員「はあ。では、お客様のお名前もお加えいたしましょうか。『サイルリア王国からいらっしゃいました伝説の女勇者エルザ姫様。あなたの命をつけ狙っている聖なる巫女ミイシャ姫様が一階受付カウンターでお待ちです』。これなら、問題ありませんよね?」

 

ミイシャ「それが、その……。あたしは今、自分がミイシャ姫だとは知らないんです」

 

店員「えええ?」

 

ミイシャ「記憶喪失なんです。自分の名前もわからないんです。紅の魔女にだまされて、エルザ姫を倒せば、記憶が戻ると信じ込んでいる状態なんです」

 

店員「えーと? では何とお呼びすれば良いのでしょう? 難しすぎて、よくわからなくなってきたのですが」

 

ミイシャ「ぬるいファンは、すぐにそういうのよ! 最近の設定は複雑すぎてついていけないって! でも、これくらい何よ。愛が足りないわ! あなたもこれがわからないようじゃ、立派なファンにはなれないわよ!」

 

店員「あ、あの、申し訳ありません。わたくしは立派なファンを目指してはおりませんので」

 

ミイシャ「そ、そうですよね。ごめんなさい。あたし、このソシャゲのことになると、つい熱くなってしまうんです」

 

店員「そうでしたよね。では、これでよろしいのでしょうか。『サイルリア王国からいらっしゃいました伝説の女勇者エルザ姫様。あなたの命をつけ狙っている自分の名前もわからない記憶喪失の方が一階受付カウンターでお待ちです』、どうでしょう?」

 

ミイシャ「それでお願いします」

 

店員「(ほっとした)ふう。では、それでお呼び出しいたしますね」

 

歩いてくる音。

 

エルザ「やっと見つけたわ!」

 

ミイシャ「あなたは、サイルリア王国の女勇者エルザ姫!」

 

エルザ「こんなところにいるとは思わなかったわ。聖なる巫女ミイシャ姫ともあろうものが、デパートの呼び出しの力に頼ろうなんて情けないことね」

 

ミイシャ「ミイシャ……姫……? あたしは本当に……聖なる巫女……ミイシャ姫なの?」

 

エルザ「そうだ、思い出せ! お前は紅の魔女に、だまされているんだ!」

 

ミイシャ「そ、そんなはずはないわ。あたしは、あなたを倒して記憶を完全に取り戻す!」

 

エルザ「ならば仕方ない! 行くわよ! 池袋のアニメショップを回ったあと、執事喫茶で休憩してから、カラオケボックスで勝負するの!」

 

ミイシャ「最初から、そのつもりよ! さあ、行きましょう。(店員に)あなた」

 

店員「あ、わたくしですか?」

 

ミイシャ「世話になったわね。あなたの優しさ、決してわすれないわ。生きていたら、また会いましょう」

 

店員「はあ」

 

エルザ「さあ、時間がないわ! 行きましょう!」

 

ミイシャ「ええ、必ず、あなたを倒してみせる!」

 

去って行く音。

 

店員「え、えーと」

 

ちょっと間。

 

店員「コスプレって……奥が深いんですねえ……」

 

おわり

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シナリオ009『伝説の女勇者と紅の魔女@メイド喫茶』

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トリニティムーンフリー脚本009

『伝説の女勇者と紅の魔女@メイド喫茶』

2016/08/18

高辻カンナ

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女勇者……伝説の女勇者エルザ

 

メイド……紅(くれない)の魔女アカネ

 

店員……メイド喫茶の同僚

 


 

メイド「『使用フリー脚本009』」

 

女勇者「伝説の女勇者と紅の魔女@メイド喫茶」

 

カランカランとドアベルの鳴る音。

 

メイド「お帰りなさいませ、お嬢さまあ」

 

女勇者「わ、私はお嬢様じゃないわ!」

 

メイド「失礼しましたあ。ではお帰りなさいませ、ご主人さまあ」

 

女勇者「ご主人様でもない! 私は女勇者エルザよ! 忘れたとは言わせないわ、紅の魔女っ!」

 

メイド「ごめんなさあい、お嬢さまあ。このメイド喫茶トリニティムーンにお帰りになるのは、初めてじゃなかったんですねえ。でも申し訳ありません。覚えてないんですう。えへっ」

 

女勇者「えへっ、じゃない! ふ。それもそうね。私を覚えていないのも無理はないわね。お前がサイルリア王国を滅ぼしにやって来たのは、私がまだ5歳の――」

 

メイド「(さえぎって)お嬢さまあ。他のご主人さまが、後ろでお待ちになっておられますう。お話は、テーブルにお着きになってからでよろしいですかあ」

 

女勇者「あ、あ。うん。じゃあ、それでいい」

 

メイド「お嬢さまは、おひとりでお帰りですかあ」

 

女勇者「そうよ! お前を倒すために集まった仲間たちは、一人また一人とモンスターにやられ、ついには私だけになってしまったのよ!」

 

メイド「では、こちらのお席にどうぞお」

 

女勇者「あ、あ。うん」

 

メイド「お嬢さまのお世話をさせていただきます、メイドのアカネと申しまあす。よろしくお願いしまあす」

 

女勇者「そうなの。紅の魔女の本当の名は、アカネと言うのね。その名前、お前の墓に必ず刻んでやるわ!」

 

メイド「お嬢さまのお名前は、エルザさまでよろしかったでしょうかあ」

 

女勇者「そうよ! 私はサイルリア王国のエルザ姫。聖なる剣(つるぎ)、ルーンブレイドに選ばれた、伝説の女勇者なのよっ!」

 

メイド「はーい。では、エルザお嬢さまとお呼びしますねえ」

 

女勇者「あ、あのね。私の話、聞いてる? きちんと理解してる?」

 

メイド「だいじょうぶです、エルザお嬢さまあ。きちんとお話についていってますよお。お嬢さまはお姫さまで、伝説の女勇者さまでもあるんですねえ」

 

女勇者「う、うん。その通りなんだけど。私がなんで、お前のところにやってきたか、ちゃんとわかってるのよね?」

 

メイド「うーん。そうですねえ。このトリニティムーンは普通のメイド喫茶と違って、お側に専属のメイドがお仕えして、そのメイドとゆっくりお話ができるのが自慢なんですう。だから選んでくださったんですよね?」

 

女勇者「違うわ! お前とお喋りするために、私は来たんじゃない!」

 

メイド「そうですかあ。ここはメイド喫茶ですからあ、普通にメイドを眺めたりい、一緒に写真を撮ったりい、もちろんお料理を召し上がることもできますよお」

 

女勇者「お、お料理?」

 

メイド「はい、トリニティムーンのお料理は、美味しいことで有名なんですよお。こちらのメニューをどうぞお」

 

女勇者「メニュー?」

 

メイド「人気は、きゅんきゅんオムライスでえす」

 

女勇者「きゅんきゅん……オムライス?」

 

メイド「はあい。メイドのあたしがケチャップでお好きな文字を書いて、美味しくなるよう、特別な魔法をかけるんでえす」

 

女勇者「魔法! やはり紅の魔女。魔法はお手のものと言うわけね!」

 

メイド「はあい。でも、あたしだけじゃないんですよお。この喫茶店のメイドなら、みんな美味しくなる魔法が使えまあす」

 

女勇者「くっ! このメイド喫茶にいる者すべてが、呪われた女魔法使いというわけなのね。恐ろしいところだわっ」

 

メイド「恐ろしいお店ではないですよお。明るく楽しく萌え萌えで、明朗会計でえす」

 

女勇者「ふふ。だがそんな魔法などはねかえして見せるわ! 私にはこのルーンブレイドがあるのだから。よし、できるものなら私に魔法をかけてごらんなさい!」

 

メイド「はーい。では、きゅんきゅんオムライスをご用意いたしまあす。おまちくださいませえ」

 

女勇者「よし、どこからでも来なさい!」

 

メイド、去る音。

戻ってくる。

 

メイド「お待たせしましたあ。シェフにエルザお嬢さまのため、とびっきり腕をふるうよう命じてきましたあ」

 

女勇者「その……魔法には、時間がかかるの?」

 

メイド「申し訳ありません、エルザお嬢さまあ。そうなんです。トリニティムーンには一人しかシェフがおりませんので、少々お時間をいただきまあす」

 

女勇者「では、それまで何をすればいいのよ?」

 

メイド「もちろんお話ですう。エルザお嬢さまは、どちらからお帰りになったんですかあ」

 

女勇者「言ったでしょ! サイルリア王国だわっ!」

 

メイド「海外ですかあ。嬉しいですう。最近はこのメイド喫茶もいろんなホームページに掲載されて、海外からお帰りになるご主人様も多いんですよお」

 

女勇者「ホーム……ページ? それは何?」

 

メイド「この喫茶店の紹介から、お勤めしているメイドの写真、空港から秋葉原駅までの行き方、この店の地図などが載っているんですよお」

 

女勇者「なんですって? ホームページ、それはいわゆる『魔法の地図』というものなの? この世界にやって来てからも迷いに迷い、やっと秋葉原にたどり着いたというのに!」

 

メイド「あらあ。羽田空港から秋葉原は、東京モノレールに乗って浜松町まで来ると早いですよお。成田空港からはスカイライナーで日暮里まで来るのが便利でえす」

 

女勇者「そ、そんな手があったのね! く……。私の苦労は一体、なんだったの……」

 

メイド「大変でしたねえ。よくここまで帰られました。えらいですう」

 

女勇者「誉めないで! え、え、いや、まって。今のセリフを、もう一度言ってみなさい」

 

メイド「はあい? 『よくここまで帰られました。えらいですう』ですかあ?」

 

女勇者「ふふふ。ようやく悪の親玉らしいセリフを言ったわね。それはつまり、『よくここまで来たな。ほめてやろう』ってことでしょう!」

 

メイド「うーん。まあ、そういうことでしょうかあ? でも、もう大丈夫ですよね。次はもう、迷わないでお店に帰れますねっ」

 

女勇者「いや、来ないわ! お前を倒せば、ここにまた来る必要などないんだから!」

 

メイド「ああん。そんな悲しいことはおっしゃらないでくださあい。エルザお嬢さまがお帰りになるたびに、このカードにスタンプを押させていただきまあす」

 

女勇者「……それで?」

 

メイド「10個集めると、特別なサービスをいたしまあす」

 

女勇者「お、教えなさい! まさか石になったお父様とお母様を、元に戻すと言うんじゃないでしょうねっ!」

 

メイド「特別なサービスですから、内緒なんですう」

 

女勇者「くっ! 10回も、この喫茶店に通わせようと言うの。なんてずるがしこいのかしら」

 

メイド「でも、好評なサービスなんですよお。楽しみにしててくださあい。ところでエルザお嬢さまはあ、普段は何をなされているんですかあ?」

 

女勇者「言ったでしょ! お前を倒し、王国を復活させるため、はるばる旅をして来たのよ!」

 

メイド「あらあ、ずっと旅行されてるんですかあ。素敵ですねえ。でも必要なお金は、どうしてるんですか? 働かないと、収入がなくて大変ですよねえ」

 

女勇者「モンスターを倒したり、困っている村人を助けたり、宝箱を開けたり、タンスをひっくり返したり、壷を割ったりとかいろいろよ」

 

メイド「短期のアルバイトですかあ。そうやってお金を稼ぎながら旅をするのも素敵ですねえ。その土地土地で、いろんな人と交流したりして」

 

女勇者「ええ。私が出会った人々は、みんな口々に訴えていたわ。紅の魔女、お前に国をぼろぼろにされた、と。勇者様、あいつを倒してください、ってね!」

 

メイド「エルザお嬢さまのご趣味はなんですかあ?」

 

女勇者「私の話、聞いてないでしょ!」

 

メイド「そんなことないですよお。紅の魔女を倒してくださいと、みんなに頼まれたんですよねえ」

 

女勇者「そうよ! そして紅の魔女とは、お前のことでしょう!」

 

メイド「ああん。あたしのことは、お前じゃなくてアカネと呼んでくださあい。ア・カ・ネ」

 

女勇者「ア、アカ、ネ」

 

メイド「わああ。エルザお嬢さまが、あたしの名前を呼んでくださいましたあ。嬉しいですう」

 

女勇者「う、嬉しいの? い、いや、待ちなさい。私はお前を喜ばせるために、はるばるここまでやって来たんじゃないわ!」

 

メイド「えー。嬉しいですよお。お帰りになったのも嬉しいですし、名前を呼んでくださったのも嬉しいですう。でもじつは、あたしが一番嬉しいのは、頭をなでなでされることなんですう」

 

女勇者「な、なでなで?」

 

メイド「はあい。よろしかったら、あたしの頭を、やさしくなでなでしてくださあい」

 

女勇者「ひ、人の頭など、なでたりしないわ! 私だって大人になってから、なでてもらったことなんてないのよ!」

 

メイド「あらあ。そうなんですかあ。それはさみしいですう。では、あたしがエルザお嬢さまの頭を、なでなでして差し上げまあす。なで、なで、なで」

 

女勇者「く……なんの……つもり……だ」

 

メイド「嬉しくないですかあ?」

 

女勇者「う、嬉しくなんかないわ! 本当よ! こ、こんなことで、お前を許したりはしないんだからねっ!」

 

メイド「そうですかあ。残念ですう」

 

女勇者「そもそも紅の魔女アカネ! お前はどうしてこんな店で働いているのよ。私にきちんと説明しなさい!」

 

メイド「えー。メイドに、そういうことを聞いちゃだめなんですよお」

 

女勇者「……そうなの?」

 

メイド「そうなんですう。でもあたしは、このお店のコスチュームがかわいくて、着てみたかったからですよお。嘘じゃないです。本当ですう」

 

女勇者「り、理解できないわ。サイルリア王国を滅ぼした紅の魔女が、洋服がかわいいという理由で、メイド喫茶に転職ですって? 世界一残酷と言われた女が、今ではメイドなの?」

 

メイド「あ。お料理ができたみたいですう」

 

テーブルに食器を置く音。

 

メイド「はーい、お待たせしました。エルザお嬢さまあ。では、お好きな文字を書きまあす。何がよろしいですかあ?」

 

女勇者「『打倒魔女』だ!」

 

メイド「文字数が多いですねえ。じょうずに書けないかもお。だ、と、う、ま、じょ、と。うーん。ちょっと読めないかなあ?」

 

女勇者「これが、きゅんきゅんオムライスなのか……」

 

メイド「では、おいしくなる魔法をかけさせていただきまあす。おいしくなあれ! もえもえ、きゅんきゅん!」

 

女勇者「も、もえもえ、きゅんきゅん……」

 

メイド「どうぞ、お召し上がりくださあい」

 

スプーンのカチャカチャいう音。

 

女勇者「(ひとくち食べて)お、おいしい。これが魔法の力というやつなの? なんて恐ろしいのかしら……(食べる音)」

 

メイド「喜んでもらえて嬉しいですう」

 

女勇者「(食べる音)」

 

メイド「エルザお嬢さまあ、ゆっくりと召し上がってくださあい」

 

女勇者「(食べる音)」

 

メイド「そんなにあわてると、のどに詰まらせてしまいますよお」

 

女勇者「(食べる音)ふう」

 

スプーンを置く音。

 

女勇者「ご、ごちそうさま……」

 

メイド「はい、おそまつさまでしたあ」

 

女勇者「い、いや。私はオムライスを食べに来たんじゃない! 確かに美味しかったけど!」

 

メイド「ほめていただき光栄ですう」

 

女勇者「ええい、まどろっこしいわ! 会話も食事も、もううんざりよっ。紅の魔女アカネ、私と勝負しなさい!」

 

メイド「はーい。では、萌え萌えじゃんけんでえす」

 

女勇者「じゃ、じゃんけん?」

 

メイド「あたしに勝つと、とっても良いことがありまあす」

 

女勇者「ふふふ。いいわよ。じゃんけんで勝負ね! 私は決して負けはしない。お前の首、必ず貰うわ!」

 

メイド「では一緒に『萌え萌えじゃんけん、じゃんけん、ぽん』って言ってくださいねえ」

 

女勇者「よし、きなさい!」

 

女勇者メイド「萌え萌えじゃんけん、じゃんけん、ぽん!」

 

女勇者「あーっ! 負けたっ!」

 

メイド「あたしの勝ちですう!」

 

女勇者「くーっ。お父様、お母様、倒れていった仲間たち、ごめんなさい。王国のみんな、ごめんなさい。私は、私はっ、最後の勝負に勝つことができなかったーっ……」

 

メイド「そんなにショックを受けなくてもいいんですよお。勝負は時の運なんですからあ」

 

女勇者「同情などいらないわ! さあ、逃げも隠れもしない。私を殺しなさい!」

 

メイド「エルザお嬢さまはオーバーですねえ。はい、残念賞の、あたしの写真でえす」

 

女勇者「しゃ、写真?」

 

メイド「サイン入りでえす。おみやげにどうぞお」

 

女勇者「おみ……やげ? はっ、これが噂に聞く『めいどのみやげ』というやつ? そうなのねっ!」

 

メイド「今度はじゃんけんに勝って、一緒に写メを撮りましょうねえ」

 

女勇者「くっ。わ、私の完敗だわ。今日は……もう……帰るわ。また……くる……」

 

メイド「はーい。今日はお帰りいただき、ありがとうございましたあ! 行ってらっしゃいませ、お嬢様あ!」

 

カランカランとドアベルの音。

ちょっと間。

 

メイド「エルザお嬢様……。ちょっと変わった、お客様ですわねえ……。あたしの記憶喪失と……何か……関係があるのでしょうか?」

 

店員「アカネちゃん、ご主人様がお待ちよー」

 

メイド「……あ、はーい! メイド喫茶、トリニティムーンにお帰りなさいませえ!」

 

おわり

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シナリオ008『セックスって何かしら?』

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トリニティムーンフリー脚本008

『セックスって何かしら?』

20160401

高辻カンナ

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お嬢様……ちょっと高飛車。

 

如月……メイド。わりとクール。

 


 

お嬢様「『使用フリー脚本008』」

 

如月「『セックスって何かしら?』」

 

ちょっと間。

 

お嬢様「如月ー。如月はどこかしらー?」

 

如月「はーい。お呼びでしょうか、お嬢様」

 

お嬢様「あなたに尋ねたいことがあるの。正直に答えなさい」

 

如月「はあ。お嬢様の命令なら、そのようにいたしますが。しかしメイドの私には仕事もございます。手短にお願いできますか?」

 

お嬢様「いいのよ、仕事なんてどうでも。こちらの方がよっぽど重要だわ」

 

如月「そうですか。では、その重要なこととは何でしょう?」

 

お嬢様「如月。あなた、ふしだらな女だそうね」

 

如月「……はい?」

 

お嬢様「他のメイドたちが噂しているわよ。あなた、男の人と同棲しているでしょう。そして毎晩毎晩、何回もセックスをしているのだわ」

 

如月「まあ、否定はいたしません。言い返すのも面倒ですし」

 

お嬢様「ごほん。それでなんだけど、如月に教えて欲しいことがあるの」

 

如月「はい、私にわかることであれば」

 

お嬢様「セックスって……何かしら?」

 

如月「……はあっ?」

 

お嬢様「あなた、大好きなのでしょう。そのセックスとやらが。それがどんなことなのか、あたしに教えなさい」

 

如月「お嬢様は……もう立派な大人ですよね?」

 

お嬢様「当たり前じゃないの。お酒だってたしなめる年齢だわ」

 

如月「なのに知らないんですか? したことがない、の間違いではなくて?」

 

お嬢様「如月はバカね。セックスが何かも知らないのに、することなんてできるわけがないでしょう」

 

如月「普通は小学校の、保健の授業で習いませんか?」

 

お嬢様「あたしは幼い頃、病弱だったから、あまり学校には通っていないの」

 

如月「年頃になったら、友達とそんな話をするのが普通でしょう」

 

お嬢様「あたしはとても高貴な生まれなの。下々の者と友達になんてならなかったわ」

 

如月「自分でググったりしたらいいんじゃないですか? それが一番早くて正確だと思いますよ」

 

お嬢様「それは、いやなの! 簡単にパソコンで調べるなんて、あたしのプライドが許さないの! 本当は人に教えを乞うのもいやなのよ? でも如月はただのメイドだし、言うなれば、あたしにとっては人間以下の存在じゃない。だから聞いてあげてやってもいいかしら、と思って」

 

如月「お嬢様……殴りますよ?」

 

お嬢様「あたしが、わざわざ質問してさしあげてるのよ? さあ、早く答えなさい!」

 

如月「わかりました。どこから説明したらいいのでしょう? 生き物には生まれつき、オスとメスの二種類がいますよね?」

 

お嬢様「カタツムリやミミズは雌雄同体と言って、オスでもありメスでもあるのよ。だから二種類ではないわね。如月はそんなことも知らないの? 教養がないのね」

 

如月「お嬢様……本当に殴りますよ?」

 

お嬢様「あなたに知識を分け与えてあげたというのに、どうして殴られなければいけないのかしら。それよりもあたしに、セックスとは何かを教えなさい」

 

如月「まあ、セックスというのは生殖活動ですね」

 

お嬢様「生殖活動?」

 

如月「男と女が、子供を作る行為ですよ」

 

お嬢様「それは結婚でしょう。夫婦になると自然に子供ができるものだと、お母様からも教わったわ」

 

如月「結婚しても、セックスをしないと子供は産まれないのです。子供を作るためにする、神聖な行為がセックスなのです」

 

お嬢様「ふふん。そんなことで、あたしはだまされないわよ」

 

如月「はあ」

 

お嬢様「じゃあ、如月。あなたは、子供を作るためにセックスしているというの?」

 

如月「私は、子供が欲しくて、しているわけではありませんねえ」

 

お嬢様「ほおら、そうでしょう! セックスは生殖活動と関係がないのだわ。第一、セックスが神聖な行為ですって? 如月みたいな汚れた人間が、そんなことをするわけないでしょう!」

 

如月「お嬢様……やっぱり殴りますよ?」

 

お嬢様「汚れた人間だけがする、下品な行為なのかしら。あたしみたいな高貴な生まれの、上品な人間には関係がないとか?」

 

如月「下品な人間だとか、上品な人間だとかは関係ありません。セックスは、みんながすることなのです。……あ。でも上品なセックスと下品なセックスはあるかもしれませんね」

 

お嬢様「なんですって?」

 

如月「ちなみに、私は下品なセックスの方が好きです」

 

お嬢様「ああ! ますます謎が深まるばかりだわ! わからない! あたしには、セックスが何か、まったくわからない! 如月みたいな、間が抜けた人間でさえ知っているというのに!」

 

如月「お嬢様……そろそろ本当に殴りますよ?」

 

お嬢様「でも、生殖活動と関係がないのは確かだわ。男同士や女同士でも、セックスはするのでしょう。男同士や女同士では、結婚しても子供はできないもの」

 

如月「だんだん面倒くさくなってきました。そうですね。では、こうしましょう。それは愛の行為なのです。二人で、愛を確かめ合うのがセックスなのです」

 

お嬢様「それはキスのことだと思うわ」

 

如月「キスよりも激しい行為なのです」

 

お嬢様「激しいキスのことは、フレンチキスと言うのよ。そもそも、愛の行為なんて嘘だわ。だって世の中には、お金のためにセックスする人もいるのでしょう」

 

如月「いますね。そういうお店もありますし」

 

お嬢様「如月だって、お金が欲しくてセックスしてるんでしょう? だって愛の行為なんて崇高なこと、あなたみたいな堕落した人間にできるわけがないもの」

 

如月「お嬢様……今のはさすがに、殴る寸前でしたよ?」

 

お嬢様「セックスするためにお金を払ったり、もらったりもするのね。ますます謎だわ」

 

如月「はいはい。セックスはとても気持ちいいのです。お金を払ってでもしたくなるくらい、それは気持ちいいのです」

 

お嬢様「それも嘘よ。初めてはとても痛いと聞いているわ」

 

如月「お嬢様は、本当に余計な知識だけはもっていますね」

 

お嬢様「もうじれったいわ! 如月、目の前でセックスして見せなさい」

 

如月「他人に見せる行為ではないですよ」

 

お嬢様「嘘よ。世の中には、セックスを撮影したDVDもあるそうじゃないの。他人に見せるためにセックスする人たちもいるのだわ」

 

如月「じゃあ、そういうDVDを借りてくればいいじゃないですか」

 

お嬢様「そんなくだらないことに、お金は使えないわ。もういい! 如月、あなた、あたしとセックスしなさい」

 

如月「はあ?」

 

お嬢様「さあ、早く! これは命令よ! 従わないと、クビにするわ!」

 

如月「仕事を失うのは困りますけどねえ」

 

お嬢様「なぜ躊躇するの? 如月はセックスが好きで好きでたまらないのでしょう。誰とでもする、ふしだらな女のはずだわ」

 

如月「お嬢様……泣いて謝るまで殴りますよ?」

 

お嬢様「さあ、はやく! なんだったら、ボーナスを払ってもいいのよ」

 

如月「……わかりました。お嬢様の寝室に参りましょう。そのかわり、あとから後悔しても知りませんし、文句を言われても困りますからね?」

 

寝室のドアの閉まる音。

ちょっと間。

 

お嬢様「あ、あ、あ。あーっ!」

 

間。

 

如月「どうでしたか? これがセックスです」

 

お嬢様「これがセックス……。生殖活動で、神聖な行為で、上品で、下品で、愛を確かめ合う行為で、キスより激しく、お金を払ったり、お金をもらったり、とても気持ち良くて、最初は痛くて、他人には見せる行為ではなかったり、他人に見せるためにする人がいたりする行為……」

 

如月「もういいですよね? 私、仕事に戻りますよ?」

 

お嬢様「でも、わからない……あたしには、やはりわからない……」

 

如月「まだわからないことがあるんですか?」

 

お嬢様「如月! もう1回、いや2回しましょう。いいえ、それでもきっと足りないわ。きちんとセックスが何かわかるまで、何度だってするわよ! もちろん、あなたもするわよね? だって如月はセックスが大好きで、ふしだらで、淫乱で、ビッチで、性欲の塊で、好き者で、いやらしくて、だらしなくて――」

 

マンガっぽい殴る音。

 

お嬢様「ああーん! 如月が殴ったあ!」

 

おわり

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シナリオ007『大人のおもちゃ屋さん』

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トリニティムーンフリー脚本007

『大人のおもちゃ屋さん』

20160302

高辻カンナ

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……大人の女性。

 

店長……子供っぽい。

 


 

店長「『使用フリー脚本007』」

 

「『大人のおもちゃ屋さん』」

 

自動ドアの音。

 

店長「いらっしゃいませー」

 

「……あなた店員さん? ってことは成人してるのよね?」

 

店長「えへん、もちろんです。それどころかあたしは、この女性向けアダルトグッズショップの店長なのです。偉いのです」

 

「そうなの。ずいぶん幼く見えるから、驚いちゃったわ」

 

店長「よく言われるんです。それで今日は、どんなものをお探しですか?」

 

「そ、それが……その……」

 

店長「恥ずかしがらなくていいんですよ。女性がアダルトグッズを使うのは、ちっとも恥ずかしいことではないのです。それは男性社会によって押し付けられた、間違った性道徳観念なのですから」

 

「そ、そうよね。じつは、バイブというものに興味があるの」

 

店長「はーい。バイブはこちらになります」

 

「ふーん。ずいぶんと種類があるのね」

 

店長「長さとか、太さとか、動きとか、いろいろあるのです」

 

「あたし、初めてなのよね。こんなにたくさんあると、迷っちゃうわ」

 

店長「初めての方には、これなんてお勧めですよ。サイズも普通ですし、お値段もお手頃なのです」

 

「この大きさで普通なの? こんなに長くて太いの、あたしの中に入るかしら……」

 

店長「意外と入るものなんですよ。あたしもこれは、大好きなひとつなんです」

 

「入るの? あなたみたいな小さな身体でも? 信じられないわね」

 

店長「普通に入りますよ。入れて見せましょうか?」

 

「入れて見せちゃうの!?」

 

店長「お客様に、安心して購入していただきたいですから」

 

「はあ。目の前でバイブを使って見せるのって、アダルトグッズショップでは普通なのかしら? あたし、こういうお店に入るのは初めてだから、よく知らないんだけど」

 

店長「うちは、他の店より親切丁寧なのです。では、これを入れる前に、っと」

 

「入れる前に、することがあるの? 知らなかったわ」

 

店長「先に入ってるのを、抜くのです」

 

「もう入ってたの!?」

 

店長「新しく入荷したバイブを試すのも、あたしの仕事なんですよ」

 

「そうなの。でもいいわ。あたしは初めてだし、やっぱり、もっと小さいのを買うことにする。あら? これは何? ずいぶん変わった形をしているけど」

 

店長「それはアナルバイブですよ。お尻に入れて使います」

 

「お尻に? こんなものが? 信じられないわ」

 

店長「入れて見せましょうか?」

 

「やっぱり入れて見せちゃうの!?」

 

店長「お客様に、安心して購入していただきたいですから」

 

「ちょっとだけ、見てみたい気もするわね。自分では、絶対に使わないだろうけど」

 

店長「では、これを入れる前に、っと」

 

「入れる前に、することがあるの? アナルバイブって、やっぱり特殊なのかしら」

 

店長「先に入ってるのを、抜くのです」

 

「そっちにも入ってたの!?」

 

店長「だから、新しく入荷したバイブを試すのも、あたしの仕事なんです」

 

「いいわ。アナルバイブは買わないから。あたしが欲しいのは、さっきより小さいバイブなの。どんなものがあるの?」

 

店長「そうですね。これなんてどうでしょう?」

 

「あら。今度は、ずいぶんと小さいのね」

 

店長「バイブの一種で、ローターと言います。敏感な所に当てたり、中に入れたりして使います。手元のリモコンで操作するんですよ」

 

「これはちょっと……良さそうね」

 

店長「使って見せましょうか?」

 

「あなた、ひょっとして、見せるのが好きなのかしら?」

 

店長「これも営業努力なのです」

 

「いいわ。これをちょうだい」

 

店長「試してみなくていいんですか?」

 

「試せちゃうの!?」

 

店長「そうなんです。買ってから『これはいまいちだった』というのも嫌でしょう? この店のお客様には、素敵なオナニーライフを送っていただきたいのです」

 

「た、試せると言われても……やっぱり、それは恥ずかしいわ。それに、えっちな気分にもなれないし」

 

店長「専用の個室には、女性向けのえっちなDVDもありますよ。買ってから後悔しても遅いのです。ゆっくりと試してみてください」

 

「じゃ、じゃあ、ちょっとだけ」

 

店長「ごゆっくりどうぞー」

 

ちょっと間。

 

「あ、あ、あ」

 

店長「どうですか? 気持ちいいですか?」

 

「ま、まあまあ、ね」

 

店長「ダイヤルで、振動の強さも調節できます」

 

「あ、あ、あ。これ、凄い、かも。あ、あ、あ。あ? あら? 動きが止まっちゃったわよ?」

 

店長「壊れたのでなければ、電池切れですね。新しい電池を持って来ましょうか?」

 

「お願いするわ。できれば、早く」

 

店長「早い方がいいですか?」

 

「お願い、早く。新しい電池をすぐにちょうだい」

 

店長「どうしてですか?」

 

「い、いじわるしないで! こんな中途半端な状態で、我慢できるわけがないでしょう!」

 

店長「じゃあ、『お願いします、店長様。あなたの奴隷になります』って言ってくださいね」

 

「ええっ? それは、どういうこと?」

 

店長「お客様は、あたしの好みなのです。奴隷になるなら、新しい電池を差しあげますよ。どうですか? 電池、欲しいでしょう? 欲しくて、もう、たまらないでしょう?」

 

「い、意地悪う……」

 

店長「あたし実は、ドSで女王様な店長なんです。ほら、はやくお願いしないと、電池はあげませんよ?」

 

「お……お願いします……店長様。あなたの……奴隷に……なります」

 

店長「はい、良く言えました。新しい電池をどうぞ」

 

ちょっと間。

 

「あ、あ、あ! あーっ!」

 

間。

 

店長「お買い上げありがとうございます。他のアダルトグッズショップに行ったら、許しませんからね?」

 

「……はい」

 

店長「では、このローター、入れて帰りますか?」

 

「ええっ!?」

 

店長「入れて帰りますよね?」

 

「は……はい……。店長様の……言う通りに……します……」

 

店長「週に一度は、新しいグッズを試しに来てください。いいですね?」

 

「は……はい……。また……来ます……」

 

自動ドアの音。

 

店長「ありがとうございましたあ! ……うふふ。一挙両得! アダルトグッズショップって、やめられなーい!」

 

おわり

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シナリオ006『イマカライク』

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トリニティムーンフリー脚本006

『イマカライク』

20151221

高辻カンナ

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語り手……女子大生

 


 

「『使用フリー脚本006 イマカライク』」

 

ちょっと間。

 

「あたしが深夜、携帯でチャットを楽しんでいた時です。そのチャットルームに突然、変な人が入って来ました。その人は挨拶の一言もなく、いきなり」

 

「『ツライ』」

 

「と書き込んだのでした」

 

「ハンドルネームは「タカシ」と名乗っています。あたしは「荒らし」の人か、こう言っては偏見かも知れませんが「メンヘラ」の人かなあ、と思いました。そのタカシさんはそれからも、会話の流れを遮って、『ツライ』とか、『イタイ』とか、『クルシイ』とか、書き込むのでした」

 

「みんなはもちろん、無視しています。「荒らし」にも、これも偏見かも知れませんが「メンヘラ」にも関わらないのが一番だったからです。しかし、『イタイ』、『イタイ』、『クルシイ』、『ツライ』、『ツライ』と書き込みが続くと、鬱陶しくもありますが、一方で興味も沸いてきます」

 

「チャットルーム主が強制退出させないということは、話かけても別に構わないということです。そこであたしは、話かけてみました。「何がそんなにツライの?」。返信がありません。あれ? 退出したのかなあ、と思っていると、やっと返ってきました」

 

「『ヒトリデツライ』」

 

「あたしは恋人と別れたばかりでしたので、何となくタカシさんの気持ちが分かります。深夜までチャットしていたのは、それで寂しかったからなのです」

 

「あたしは、「一人はツライよねえ」と書き込みました。するとやはりしばらくしてから、返信があります」

 

「『オレノキモチワカルカ』」

 

「あたしは返信を書き込みました。「分かるよ。あたしも今、一人だもん」また書き込みが止まりました」

 

「しかし、だいぶ経ってから、タカシさんはこう書き込んだのです」

 

「『オレノヨメニシテヤル』」

 

「あはははは、と私は笑ってしまいました。「俺の嫁」なんて、まさしく、おたくが言いそうな言葉です。あたしは返信します。「いいよー。お嫁さんにしてしてー」。また書き込みが止まりました」

 

「しかし、まただいぶ経ってから書き込まれた言葉に、あたしは、ぞくりとしてしまいました」

 

「『イマカライク』」

 

「あたしは、これはチャットの常識なので当然なのですが、個人情報は書き込んでいません。本名はもちろん、電話番号も住所も通っている大学名さえも、書き込んではいません。誕生日だって誰も知らないはずなのです。それなのに、あたしはぞくり、としたのでした。あたしは、「これで寝るわ。おやすみなさい」とみんなに挨拶する と、チャットルームを退出しました」

 

「あたしは歯を磨き、顔を洗い、ベッドに入りました。しかし、眠れません。本当にタカシさんが、やって来たらどうしよう? 「大丈夫、大丈夫」。あたしは呟きます。だって、あたしの住所など、誰も知る訳がないのですから」

 

「その時です。ドンドンドンドン。 激しくドアを叩く音がしました。こんな時間に誰だろう? あたしは、そっと足音を忍ばせてドアに近づき、ドアスコープから外を覗きます。「あれ?」。そこには誰もいなかったのでした」

 

「友達じゃない。友達だったら、こんな時間に来るはずもないし、姿を隠すようないたずらもしないはずです。たとえ来るなら、電話の一本もあるはずです。タカシさん? 本当にタカシさんが来たのかもしれない。もし本当にタカシさんだとしたら、気味が悪いことです。どうして住所がばれてしまったのでしょう?」

 

「ドンドンドンドン。音は大きくも小さくもならず、先程と同じように鳴り響きます。あたしは、また来た時と同じように、こっそりとベッドに戻りました。あたしは耳を塞ぎました。ドンドンドンドン。返事をしたら、居留守がばれてしまいます。「帰って」。「お願いだから帰って」。あたしは目を瞑り、声が出ないようにして、じっと耐えます」

 

「そうして、何度、叩かれた後でしょうか。ドアを叩く音は無くなりました。あたしは、ほっとしました。タカシさんと思われる人は、帰った様に思われたからです」

 

「その時です。コンコンコンコン。今度は、窓を叩く音がするのです。ああ! この部屋は、アパートの二階なのに! コンコンコンコン。その時、やっと私にもわかったのでした。タカシさんは、生きた人間ではなかったのです」

 

「あたしは、ベッドの中で震えていました」

 

「『イマカライク』」

 

「まさしくその言葉通りに、タカシさんはやって来たのです。ああ、冗談でも「お嫁さんにして」何て書き込むべきではなかったのです」

 

「そうして、また何度、窓を叩かれた後でしょうか。あたしは、今度こそ、ほっとしました。もう外は、いつの間にか明るくなっていたからです。小鳥の鳴き声が聞こえます。あたしはベッドを抜け出すと、手早く着替え、カバンに携帯と、とりあえずの衣服を突っ込みました。また夜になったら、タカシさん、その幽霊が、現れるように思われたからです」

 

「逃げなきゃ。あたしは実家に逃げ込むつもりでした。実家にさえたどり着けば、どうにかなる。そう思いました。あたしはカバンを持って、ドアを開けました」

 

「すると。外はまだ、真っ暗だったのです。そして、そこには」

 

「血まみれの男が立っていたのでした」

 

おわり

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シナリオ005『家出』

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トリニティムーンフリー脚本005

『家出』

20151212

高辻カンナ

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女教師……まだ若い。ほんわかした感じ。

 

浩子……女生徒。真面目な感じ。

 


 

女教師「『使用フリー脚本005』」

 

浩子「『家出』」

 

ちょっと間。

 

女教師「で、浩子さん。どうして家出なんかしたの?」

 

浩子「先生のことは大好きですが、言いたくありません」

 

女教師「あーん。いじわるう。浩子さんが教えてくれないと、先生も叱られちゃうのよ? ねー、おねがいー。ダークモカチップクリームフラペチーノおごるからあ」

 

浩子「ごめんなさい。どうしても言えません」

 

女教師「この数日、どこに泊まっていたのかぐらい、教えてくれてもいいわよね?」

 

浩子「ごめんなさい。それも言えません」

 

女教師「ふーん。でも先生にはわかっているのよ。なぜなら、あたしはベテラン教師だから。浩子さん、恋人と一緒だったでしょう!」

 

浩子「え、え? ……あ、はい。そうなんです。あたし、恋人と一緒にいたのです」

 

女教師「まあ。不純異性交遊というやつなのね。ご両親が聞いたら、とても悲しむわよ」

 

浩子「いいんです! あんな人たちなんか関係ありません!」

 

女教師「それもそうよね!」

 

浩子「え、え、え?」

 

女教師「浩子さんだって、年頃の女の子だもの。愛する彼氏と一緒にいたい、その気持ちわかるわあ。親なんて関係ないわよね。恋って、そういうものだから!」

 

浩子「あ、あの。教師として、それでいいのでしょうか?」

 

女教師「いいのよ。あたしは先生である前に女、いや人間なんだから。誰かを愛する気持ち、それは誰にも止めることができないの。ええ、もちろん、親なんかには止められないわ!」

 

浩子「は、はあ」

 

女教師「そ、それでね。あの。聞きにくいんだけど。そ、その。じゃあ彼氏と……えっちしたのね?」

 

浩子「え? それは、その……」

 

女教師「(真面目な声で)浩子さん、これは大事なことなの。正直に、答えなさい」

 

浩子「はい、しました。あたし、彼氏と、えっちしました」

 

女教師「あーん。うらやましいわあ!」

 

浩子「え」

 

女教師「先生、じつはまだ処女なのよう。浩子さん、うらやましいわあ。ねえねえ、やっぱり痛かった? 先生に隠さないで教えなさいよお」

 

浩子「先生、話が脱線していると思います。あたしが家出した理由を、知りたいのではなかったのですか?」

 

女教師「そんなこと、先生にはもうどうでもいいの。ねえ、痛かった? どれくらい? タンスの角に、足の小指をぶつけた時よりも痛い?」

 

浩子「……それよりも、はるかに痛かったです」

 

女教師「うわあ! それは痛いわねえ。でね、その……男性のアレってどれくらいの大きさなの?」

 

浩子「先生、あたしがなぜ家出したのか聞いてください」

 

女教師「だから興味がないの。ねえ、教えてよお。男性のアレって、大きいんでしょ? どれくらいの大きさなのよお」

 

浩子「……これくらいです」

 

女教師「ええっ、嘘でしょ! いくらなんでも、そんなに大きいはずがないわ」

 

浩子「……すみません、これくらいでした」

 

女教師「え? 今度はそんなに小さいの? ははーん。浩子さん、先生に嘘をついてるでしょう。ひょっとしたら、彼氏とえっちしたというのは嘘なんじゃないかしら」

 

浩子「そんなことありません! あ、あの、男性のアレは大きくなったり小さくなったりするじゃないですか。先生だって、それくらいのことは知っているでしょう?」

 

女教師「うわあ、本当に経験した人の言うことは、やっぱり違うわあ。でね、最後まで痛かった? 途中から気持ち良くなった? 先生、心配なのよう」

 

浩子「先生。お願いですから、どうして家出したのか聞いて欲しいです」

 

女教師「そんな話はどうでもいいってば。ねえ、ねえ。先生はこれから経験するのよ? 教えてくれてたっていいじゃない。最後まで痛かった? それとも、途中から気持ち良くなった?」

 

浩子「……途中から気持ち良くなりました」

 

女教師「そうなの! 身体の仕組みって不思議なものねえ」

 

浩子「先生。あたし何でも話します。お願いですから、どうして家出したのか聞いてください。その話がしたいです」

 

女教師「いいえ。もういいわ」

 

浩子「いいんですか!?」

 

女教師「親御さんには今の話、そのまま伝えていいのよね?」

 

浩子「……はい。構いません」

 

女教師「ご両親は、さぞお怒りになるんじゃないかしら」

 

浩子「いいんです! あんな人たちがどう思おうと、あたしには関係ありません!」

 

女教師「浩子さん。お母様、心配のあまり倒れられたそうよ」

 

浩子「ええっ?」

 

女教師「それにお父様は、ボロボロ泣いていらっしゃった。『俺が悪かった。浩子ごめん。お父さんを許してくれ』って」

 

浩子「あの冷たい、あたしの成績にしか興味がない人が……」

 

女教師「何があったか先生は知らないけど、きちんと話し合うべきだと思うな。家出なんて幼稚なことをしても、問題は解決しないわよ?」

 

浩子「先生……」

 

女教師「彼氏とえっちしたとか、嘘なんでしょう。余計に両親を心配させてみようなんて、そういうのも良くない考えよ」

 

浩子「……ばれてたんですか」

 

女教師「これでも先生だからね。いえ、女の先輩だから、かしら。これでも先生、男性との経験はあるのよ? この数日は、どこに泊まっていたの」

 

浩子「マンガ喫茶を、転々としていました」

 

女教師「えっちなことは、もちろんなしね?」

 

浩子「はい、ありません。教えて貰ってもいいですか? あたしがえっちなことをしていないって、いつからわかってたんですか?」

 

女教師「この部屋に入ってきたときから、先生には、わかっていたわよ」

 

浩子「先生には、かなわないな……」

 

女教師「だって歩き方が普通なんですもの! 初めてのえっちをした後は、足の間に何かが挟まってる気がして、ガニマタになるのよ! そうよ、そういうものなの! 先生は大人で経験済みだから、何でも知っているのよ!」

 

浩子「先生……やっぱり処女なんでしょう?」

 

女教師「いやーん。どうしてばれちゃったのお?」

 

おわり

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シナリオ004『困った同居人』

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トリニティムーンフリー脚本004

『困った同居人』

2015

高辻カンナ

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サツキ……OL。知的な感じ。

 

澄子……幽霊。ほんわかした感じ。

 


 

サツキ「『使用フリー脚本005』」

 

澄子「『困った同居人』」

 

ちょっと間。

 

サツキ「ただいまー」

 

澄子「お帰りなさーい」

 

サツキ「あー疲れた疲れた。もう、毎日残業で嫌になっちゃう」

 

澄子「お疲れ様です。ビール冷えてますよ。それとも、先にお風呂にしますか?」

 

サツキ「うーん、まずはビールにするかなあ」

 

澄子「簡単なものですけど、おつまみもありますよ。オクラとお豆腐を、小さく切って混ぜ混ぜしてみました。ヘルシーで美味しいと思うのですが」

 

サツキ「わあ、それは素敵だなあ。じゃあ、まずはビールっと。(ビールを飲む音)ごくっ。ごくっ。ごくっ。ぷはあ!」

 

澄子「サツキさんって、本当に美味しそうにビールを飲みますよね。うらやましいなあ。あたし、ビール飲めませんから」

 

サツキ「って言うか、澄子さん、物も食べられないよね」

 

澄子「そうですねえ。我々は、香りを楽しむだけです。それが食事代わりなんですよ」

 

サツキ「あ、あのさあ……澄子さん」

 

澄子「あら。急にあらたまって何でしょう?」

 

サツキ「そろそろ、成仏してみない?」

 

澄子「え」

 

サツキ「って言うか、おかしいよ! こんな幽霊との共同生活は! お願いだから、そろそろ出て行ってえ!」

 

澄子「そう言われましてもお。先に住んでたのは、あたしの方なんですし」

 

サツキ「ええ? 出て行くのは、あたしの方だって言うの?」

 

澄子「そ、そんなことは言ってませんよお。でも、あたしがいて便利でしょう? こうしてご飯も作りますし、お洗濯もしますし、お掃除もしますし、朝だって低血圧なサツキさんを必ず起こしているじゃないですか」

 

サツキ「だから、必ず起こしてくれるのは嬉しいけど! 部屋中がピシピシ鳴ってるのは怖いのよう。怖くてベッドから飛び起きてるだけなのよう」

 

澄子「あの音は、専門的にはラップ音って言うんですよ?」

 

サツキ「そんなことはいいから! お願い、出てってよお。こんなことじゃ、彼氏も家に呼べないのよお」

 

澄子「わあ! 彼氏さんができたのですか。あたしにも紹介してくださいね」

 

サツキ「紹介しません。そんなことしたら、一発でフラれます。って言うか、霊感がある人以外には見えないんでしょ?」

 

澄子「夜中に鏡をのぞけば、普通の人でも背後に見えることがあるのです」

 

サツキ「怖いよ!」

 

澄子「じゃ、じゃあ、あたしは姿を消してますから。それなら2人で、思う存分ラブラブできますよね?」

 

サツキ「幽霊がいるとわかってるのに、そんなことできるわけないでしょう。あーん。もう嫌だあ。どうやったら成仏してくれるのよう」

 

澄子「さあ、わかりません。自分でも、なぜ成仏できないのかわからないのです」

 

サツキ「やっぱり、きちんとお祓いしてあげようか?」

 

澄子「あれは苦しいからいやなんです。許してください」

 

サツキ「でも天国に行けるのよ? 天国って、いいところだと思うなあ。ちょっと苦しくても、我慢すればいいんじゃないかなあ」

 

澄子「ひどいです、サツキさん! そんな人だとは思いませんでしたっ」

 

サツキ「あたしの生活をめちゃくちゃにしてる、澄子さんも十分にひどいのよ?」

 

澄子「あ! そう思っていたのですか。いいですよお。……祟りますから」

 

サツキ「あーん! それだけは言っちゃだめえ! あたしはね、念願のひとり暮らしなの。友達を呼んでたこやきパーティしたり、彼氏を呼んでラブラブしたりしたいの」

 

澄子「あたしだって、友達を呼ぶのを我慢してるんですよ? じゃあ呼んじゃいますからね?」

 

サツキ「絶対にだめえ! もうわかりました。あたしが一生懸命に手を合わせますから、それで成仏してください。お願いします」

 

澄子「だからあたしも、それで成仏できるのかわからないのです」

 

サツキ「とりあえず、やってみよう? ね? 澄子さんに向かって手を合わせればいいのかな?」

 

澄子「うーん。何だかそれは、あたしが偉くなったみたいで恥ずかしいです。もっと別なところに手を合わせてください」

 

サツキ「じゃあ、どこに向かって?」

 

澄子「そうですねえ。あたしが、ぶら下がっていたのは確か……」

 

サツキ「あーん! やっぱり自殺だったんだあ。今まで怖くて聞けなかったけど、そういう死に方だったんだあ。だから幽霊になっちゃったのねっ?」

 

澄子「あ、幽霊差別。殺されちゃった人だって、幽霊にはなりますよ?」

 

サツキ「そうかも知れないけど。ねえ、どうして自殺しちゃったの? その理由を解消してあげたら、きっと成仏できるんじゃないかしら」

 

澄子「なんだったかなあ。もう忘れちゃいましたねえ」

 

サツキ「忘れちゃうものなの!?」

 

澄子「きっと、たいした理由じゃなかったんですよ」

 

サツキ「たいした理由もなく自殺しちゃだめーっ!」

 

澄子「あ」

 

サツキ「思い出した!?」

 

澄子「ゴキブリがいます」

 

サツキ「ああ! いや! いや! あたしゴキブリはだめえ! お願い、澄子さん、退治してえ!」

 

澄子「あたしと同居してくれます?」

 

サツキ「するする! いつまでも、好きなだけいていいからあ! あーん、はやくう!」

 

澄子「じゃあ。えい! はい、退治しましたよ」

 

サツキ「うう。情けない。幽霊よりも、たかが虫の方が怖いなんてえ。あれ?」

 

澄子「いつまでも……好きなだけ……いてもいい……」

 

サツキ「澄子さん? 光ってる! 身体が光ってるよっ」

 

澄子「あは。何だか嬉しくなったら、成仏できる気がしてきました」

 

サツキ「え? そうなの?」

 

澄子「ビン缶ペットボトルは水曜日、燃えないゴミは金曜日。忘れないでくださいね?」

 

サツキ「す、澄子さん……」

 

澄子「では、これにて。長い間、お邪魔しました」

 

ちょっと間。

 

サツキ「ばか。いきなり成仏しなくたっていいじゃない」

 

ちょっと間。

 

サツキ「あ。オクラとお豆腐、美味しいな……」

 

澄子「混ぜすぎないのがポイントです!」

 

サツキ「って成仏してないのかよ!」

 

おわり

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シナリオ003『押し売りとお姉さん』

以下の利用規約に準ずる限り、音声作品の脚本として自由に使用することができます。

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トリニティムーンフリー脚本003

『押し売りとお姉さん』

20151120

高辻カンナ

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押し売り……女性。元気な女の子。ネコ。

 

お姉さん……女性。クール。知的な感じ。タチ。

 


 

押し売り「『使用フリー脚本003』」

 

お姉さん「『押し売りとお姉さん』」

 

ちょっと間。

 

押し売り「こんにちは」

 

お姉さん「どちらさまかしら?」

 

押し売り「押し売りです」

 

お姉さん「はい、さようなら」

 

押し売り「はやいです!」

 

お姉さん「だって押し売り、お断りだもの。悪質だから」

 

押し売り「あたしは良心的な押し売りなんです」

 

お姉さん「そんなの聞いたことないわね。ちょっと面白そう」

 

押し売り「ありがとうございます」

 

お姉さん「で、何を売るの?」

 

押し売り「新聞です」

 

お姉さん「はい、さようなら」

 

押し売り「はやいです!」

 

お姉さん「だって、つまらないんだもの」

 

押し売り「いまなら洗剤がつきます」

 

お姉さん「つまらない」

 

押し売り「野球のチケットもつきます」

 

お姉さん「つまらない」

 

押し売り「コンドームがつきます」

 

お姉さん「ちょっと面白いわね」

 

押し売り「とてもいいコンドームです。薄くて丈夫です」

 

お姉さん「そこは普通なの」

 

押し売り「とても避妊に効果があります」

 

お姉さん「それも普通。はい、さようなら」

 

押し売り「はやいです!」

 

お姉さん「だって、つまらないんだもの」

 

押し売り「じつはこのコンドーム、秘密があるのです」

 

お姉さん「それはちょっと面白そうね」

 

押し売り「本当は、避妊効果がないのです」

 

お姉さん「あら、意外な展開」

 

押し売り「目に見えない穴が開いているのです。子供が実は欲しい奥様に、大好評なのです」

 

お姉さん「ああ、なるほど。でもあたし、独身だから。はい、さようなら」

 

押し売り「はやいです!」

 

お姉さん「だって、必要ないから」

 

押し売り「恋人はいませんか?」

 

お姉さん「恋人もいないの」

 

押し売り「夜はさみしくないですか?」

 

お姉さん「そういうことを聞く押し売りって、ちょっと面白いわね」

 

押し売り「バイブをお付けします」

 

お姉さん「あら、意外な展開」

 

押し売り「太くて長くて、とてもいいバイブです」

 

お姉さん「もっとくわしく」

 

押し売り「ぐいんぐいん動いて、中をかきまわします」

 

お姉さん「もっとくわしく」

 

押し売り「強さも三段階から選べます」

 

お姉さん「やっぱり普通。はい、さようなら」

 

押し売り「くいついたと思ったのに!」

 

お姉さん「バイブは大好きだけど、自分では使わないの」

 

押し売り「それは意外な展開です」

 

お姉さん「お姉さんはレズビアンなの。パートナーをせめるのが好きなの」

 

押し売り「いわゆるタチですね」

 

お姉さん「いわゆるタチよ」

 

押し売り「じゃあ、パートナーに使えばいいじゃないですか」

 

お姉さん「だから今、恋人がいないの」

 

押し売り「いないんですか?」

 

お姉さん「夜はさみしいの」

 

押し売り「さみしいんですか?」

 

お姉さん「ただいま恋人募集中なの」

 

押し売り「じつはあたしもレズビアンなんです」

 

お姉さん「あら、意外な展開」

 

押し売り「しかも、せめられるのが好きなんです」

 

お姉さん「いわゆるネコね」

 

押し売り「いわゆるネコです」

 

お姉さん「恋人はいる?」

 

押し売り「ただいま募集中です」

 

お姉さん「じゃあ新聞を契約すると?」

 

押し売り「あたしがついてきます」

 

お姉さん「はいハンコ」

 

押し売り「わーい、わーい!」

 

お姉さん「部屋に入って」

 

押し売り「はーい! よろしく、お姉さまあ!」

 

おわり

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シナリオ002『新しいお母さん』

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トリニティムーンフリー脚本002

『新しいお母さん』

20151029

高辻カンナ

icon_146971_64icon_120971_64


 

晴美……新しいお母さん

 

まどか……年頃の娘

 


 

晴美「『使用フリー脚本』002」

 

まどか「『新しいお母さん』」

 

ちょっと間。

 

晴美「まどかちゃーん。晩御飯できたわよー。まどかちゃーん。あら?」

 

まどか「か、かってに部屋にはいってくるんじゃねえよ」

 

晴美「だってドアが開いてたんだものー。でも、ごめんね。お母さん、まどかちゃんを怒らせちゃったかしら」

 

まどか「ああ、げきおこだよ。でもその前に、言っておく。お母さんじゃねえよ。あたしはまだ、あんたを新しいお母さんとは認めてないんだからな」

 

晴美「ああん、お母さん、悲しい。でもせめて、『あんた』って呼ぶのはやめて欲しいわあ。だって、もう一緒に暮らしてるんだもの。ね、せめて名前で呼んで。お願い、まどかちゃあん」

 

まどか「ちぇっ、しょうがねえなあ」

 

晴美「じゃあ、呼んでみてえ」

 

まどか「今なのかよ」

 

晴美「うん、い、ま。お願い、はやくう」

 

まどか「は、晴美……さん」

 

晴美「ああん。嬉しいわあ。お母さん、こんな可愛い妹が欲しかったのお。もー、ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ」

 

まどか「抱きつくんじゃねえよ、うっとおしいなあ」

 

晴美「可愛い妹みたいだけど、戸籍上は娘になるのよねえ。でも歳が近いんだから、気持ち的には妹になっちゃっても仕方がないわよね。うーん? まどかちゃんはどういう気持ちかな?」

 

まどか「そういうデリケートなことを直球で聞くなよ。あたしだって、まだ整理がつかなくて悩んでるんだよ。少しは察しろ」

 

晴美「あら、悩み? お母さんに、何でも相談してごらんなさい。お母さん、まどかちゃんの力に、きっとなってみせるわ」

 

まどか「だから、晴美さんのことで悩んでるんだよ。お母さんお母さんって何度も言うな。って言うか、部屋を出てってくれる? この家には、プライバシーもないのかよ」

 

晴美「うーん? あのね、お母さんもね、それはちょっと困ってるのよ?」

 

まどか「……どういうことだよ」

 

晴美「あら、まどかちゃん、聞いてくれるの? 優しいわあ」

 

まどか「単なる興味だよ。優しいからじゃねえよ」

 

晴美「あのね、この家、ちょーっと壁が薄いでしょ? お母さんとお父さんが、夜中にえっちしてる時の声、まどかちゃんに聞こえてないかしら? どう?」

 

まどか「だから直球で聞くんじゃねえよ。答える方が逆に気まずいだろ」

 

晴美「で、どう? やっぱり聞こえてる?」

 

まどか「ああ、ばっちり聞こえてるよ。毎晩、あんあんあんあん、良くも飽きずにやってるな」

 

晴美「あーん。お母さん、やっぱり声が大きく出ちゃうのよねえ。でもね、それはお父さんがテクニシャンだからなのよ? ひとりでする時は、もう少し静かよ?」

 

まどか「そんなこと聞いてねえよ。つーか、お父さんと晴美さんがえっちしてる姿、想像しちゃっただろ。年頃の娘には、もっと気をつかえよ」

 

晴美「まどかちゃんはどう? 声がやっぱり出ちゃうタイプ?」

 

まどか「あたしのことは、どうでもいいだろ。第一、何でそんなことまで、晴美さんに話さなきゃいけないんだよ」

 

晴美「あらあ。家族の間では、隠し事はなしだわ」

 

まどか「それは普通、隠す事だろ。むしろ家族なら、余計に隠したい事だろ」

 

晴美「あたしは声も大きいけど、おつゆも多いタイプなのよねえ。毎晩、シーツがぐっしょりになっちゃうの」

 

まどか「だから聞いてないだろ。お父さんと晴美さんがえっちしてる姿、また想像しちゃっただろ。普通ならとっくに、家出してるレベルのデリカシーの無さだぞ」

 

晴美「ネットでググったら、ペットシーツを下に敷けばいいって書いてたのよ。でも、わんちゃんもいないのに、ペットシーツを買うのもねえ。ご近所の人に見られたら、何てごまかせばいいのかしら。まどかちゃんは、どう思う?」

 

まどか「知らねえよ。つーか、ペットシーツを使うとか、変な知識をあたしに教えるな。年頃だって言ってるだろ」

 

晴美「まどかちゃんには、そういう悩みはないのね。うらやましいわあ。でもたっぷり濡れないと、えっちの時、痛くない?」

 

まどか「知らないよ! あたし処女だから! そんなこと、まだ知らないのっ!」

 

晴美「あらあ。どうして処女なの? まさか、お尻でしてるとか?」

 

まどか「なんでだよ。単純に、彼氏がいないからだよ」

 

晴美「うーん? どうして彼氏がいないの?」

 

まどか「あたしが可愛くないからだよ」

 

晴美「あらあ。そんなことないわ。まどかちゃん、あたしなんかより、とっても可愛いわよ? だって、あのお父さんの娘なんだもの。うん、可愛い、可愛い。モデルにだってスカウトされたこともあるんでしょ?」

 

まどか「でも、いつも言われるんだ……お前、ちっとも可愛くないって……」

 

晴美「あら? それは性格のお話? そんなことないわよ。内面だって、とっても可愛いと思うの」

 

まどか「こうして晴美さんに、冷たくしてても?」

 

晴美「うん。関係ないわ。まどかちゃんは、とっても可愛い」

 

まどか「可愛くないよ! ちっとも可愛くないよ! 晴美さんのこと、祝ってあげようと、お母さんって呼んであげようと思ってたのに! でも、やっぱりできなくてっ! こうやって冷たく当たってるしっ! ああ、もう! あたし、何か変なこと言ってるし!」

 

晴美「もお、まどかちゃんったらあ。ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅーっ」

 

まどか「晴美……さん……」

 

晴美「いいのよ。まどかちゃんが可愛い女の子だってこと、お母さんは、ちゃーんとわかってるの。だから無理しなくていいから、ね?」

 

まどか「う、うん……」

 

晴美「さあ、ご飯が冷めちゃうわよ。はやく台所に行って食べましょ、ね?」

 

まどか「うん……」

 

晴美「あー。お母さん、もう、お腹ぺこぺこだわあ」

 

まどか「あ、あの! お、おか、おかあ……」

 

晴美「なあに?」

 

まどか「お、お母さんとか、これで簡単に呼ぶと思うなよ! あたしはまだ、晴美さんのこと、お母さんとは認めてないんだからな!」

 

晴美「うーん、それは残念。もうひと押しだったかしら?」

 

まどか「で。今日のメニューはなんだよ」

 

晴美「お父さんが大好きな、ハンバーグよぉ」

 

まどか「またハンバーグなのかよ! (小声で)ちぇっ、しょうがないなあ……うちの、新しいお母さんは」

 

おわり

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